CUTTER & BUCK

COLUMN

That's Golf in America.

在米ゴルフジャーナリスト舩越園子によるアメリカンゴルフコラム

vol.1

それぞれのゴルフ。それぞれのプライド。

今から20年ほど前、まだ渡米したばかりだった私はジョージア州アトランタのゴルフクラブで初めての女性クラブ選手権に挑み、最終日最終組で初タイトルに迫っていた。

寒い冬の日だった。ハーフターンで熱いコーヒーを飲み、チョコレートをかじると、同組だった歴代女性クラチャンが大声でこう言った。「まあ、脳を刺激するものばかり飲んで食べて、せっかくの集中力が乱れるわよ」。そんなワケない。心の中で否定すればするほど私のゴルフは乱れ、結局、彼女に敗北。悔しくて悔しくて、その夜は泣きながら寝た。

今、思えば、当時の私の2倍ぐらいの年齢だった歴代女性クラチャンには、彼女なりの女王の意地とプライドがあり、必死だったのだと思う。その必死さから仕掛けられた舌戦に私はあえなく敗北したのだ。負けは負け。そう頷けるようになった3年後、私は彼女を抑え、優勝してクラチャンになった。

数年前、米ツアーを取材中、一人の日本人女性と知り合った。彼女はご主人の転勤で海外を転々としながらゴルフの腕を磨き、ついにはカリフォルニア州サンディエゴのトーリーパインズで女性クラチャンに輝いたという。トーリーパインズはムニシパル(公営)だが、数百名の有志で構成するメンバー会がある。「かつて住んだマカオや香港のアマチュア大会でいい成績を出したけど、アジアでの実績なんてアメリカでは無意味と言われた」。メンバー会の仲間からそう言われた悔しさが彼女を女性クラチャンへ駆り立てたのだそうだ。

アメリカのゴルフは間口が広い。だが、その中には、プロ、アマ、老若男女、それぞれのフィールドがあり、それぞれのこだわり、意地やプライドがある。そう、アメリカのゴルフは、ゴルファー一人一人の"らしさ"の光を集めた巨大な集合体。だからこそ、いつも大きく素敵に輝いている。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。
学生時代に行っていたゴルフ経験を活かしてゴルフジャーナリストへ。1993年に渡米。米国に常駐し、米ツアーを中心に取材活動を行なう。自身にコーチをつけてゴルフを本格的に練習するなどプレイヤーとしての視点も持ち合わせ、ツアープロや関係者たちからの信頼も厚い。新聞や雑誌、ゴルフ専門誌等で執筆する他、ラジオや講演など多方面で活躍中。