CUTTER & BUCK

COLUMN

That's Golf in America.

在米ゴルフジャーナリスト舩越園子によるアメリカンゴルフコラム

vol.3

感謝の心、厚い層

1993年からアメリカでゴルフの取材を始め、最初に驚かされたのは、ジュニアツアーの充実ぶりを知ったときだった。未来のプロを夢見るジュニアたちのツアーは年間を通して全米各地で開催されている。その実態をこの目で見たくなって、AJGA(全米ジュニアゴルフ協会)の大会に出かけていった。

ジョージア州アトランタ郊外で開かれた大会。偶然にも、そのとき目の前で優勝したのが、まだあどけない顔をした今田竜二だった。表彰式でマイクの前へうながされた今田。ジュニアの優勝スピーチなのだから「うれしいです」などと率直な一言だけを発するのかと思ったら、今田は流暢な英語で「この大会を支えてくれた関係者やボランティア、AJGAの方々、ありがとうございます」と、まず感謝の言葉を口にした。

米ツアーの表彰式でも優勝した選手がまず感謝の言葉を述べることを、その後に知った。いや、トッププレーヤーたちがそうするからこそ、ジュニアゴルファーも同じフレーズを口にするのだろう。だが、それは単なる真似だけではない。これこそが米ゴルフ界の根幹をなすものなのだと、あるとき気が付いた。

戦う場があるからこそ戦える。いろいろな人々がいろいろな形で支えてくれるからこそ、ゴルフができる。運営する人々、整備する人々、マーシャルやボランティア。ゴルフに携わる人々の苦労や努力を間近に眺め、「いろいろ」のありがたさを肌身で感じてきたからこそ、ジュニアも米ツアー選手も、自ずと「ありがとう」を示したくなる。

ゴルフ界の偉人は大会を支える人々をとても大切にする。アーノルド・パーマーは自身の最後の全米オープンでボランティアのテントに赴き、居合わせた全員と握手を交わした。一人一人の感謝の心が、厚い層、大きな世界へつながっていく。そんな文化が根付いているアメリカのゴルフが、私は大好きだ。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。
学生時代に行っていたゴルフ経験を活かしてゴルフジャーナリストへ。1993年に渡米。米国に常駐し、米ツアーを中心に取材活動を行なう。自身にコーチをつけてゴルフを本格的に練習するなどプレイヤーとしての視点も持ち合わせ、ツアープロや関係者たちからの信頼も厚い。新聞や雑誌、ゴルフ専門誌等で執筆する他、ラジオや講演など多方面で活躍中。