CUTTER & BUCK

COLUMN

That's Golf in America.

在米ゴルフジャーナリスト舩越園子によるアメリカンゴルフコラム

vol.5

冬のあとには春が来る。

「第5のメジャー」と呼ばれるプレーヤーズ選手権でTV解説者として会場入りしていた今田竜二にばったり出くわした。米ツアーの出場権を失って暗い顔をしているのではないかと心配していたが、久しぶりに会った今田は明るい笑顔をたたえていた。

振り返れば、今田は14歳で単身渡米して以来、本当にたくさんの山谷を乗り越えてきた。ジュニア時代はタイガー・ウッズと肩を並べる注目の存在だったが、大学時代は外国人ゆえの苦労も味わい、プロ転向後は下部ツアーで予想外の長居を強いられた。偶然か、必然か、そんな今田の人生の節目節目で彼と会い、いつも励ますつもりが逆に励まされた。

下部ツアーで孤軍奮闘している今田を取材に行ったときも、そうだった。試合終了後に夕食に誘うと「今夜のうちに次の試合会場へ車で移動するから、ゆっくり食べる時間がないんです」。それなら急いで食べてすぐ出発したらどうかと提案すると、今田は安心したような顔で頷いた。

ゴルフバッグから身の回りの品々まで、すべての荷物を"愛車"に詰め込み、待ち合わせしたチャイニーズ・レストランにやってきた今田。彼の愛車は片方のドアミラーが取れかかった中古車だった。4日間を戦い終えた直後から、疲れた体でこの車のハンドルを1人で8時間も握り続けるのは大変だなと思ったが、黙々と食べる今田を眺めていたら、だんだん心配が薄れてきた。

この子なら大丈夫。そう感じたのは、きっと夢に向かって突き進む前進のパワーが今田から溢れ出していたからだろう。少ない賞金、孤独な転戦、報われない下積みの日々。それは、いわば冬の時代だが、それでも春の到来を信じ、まっすぐに前を向いていたあのころの彼の笑顔が私は大好きだった。

シード権を失い、カンバックを目指す現在の今田は再び冬の時代にある。けれど、久しぶりに会った彼がかつてと同じような笑顔を見せてくれたことがとてもうれしく思えた。

きっとまた春が来る。冬のあとには春が来る。彼の笑顔を見るたびに、私もそう信じられる。

冬のあとには春が来る。
文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。
学生時代に行っていたゴルフ経験を活かしてゴルフジャーナリストへ。1993年に渡米。米国に常駐し、米ツアーを中心に取材活動を行なう。自身にコーチをつけてゴルフを本格的に練習するなどプレイヤーとしての視点も持ち合わせ、ツアープロや関係者たちからの信頼も厚い。新聞や雑誌、ゴルフ専門誌等で執筆する他、ラジオや講演など多方面で活躍中。